和歌と俳句

水仙

水仙や母のかたみの鼓箱 虚子

水仙を買ひ風塵にまぎれ行き 汀女

水仙や師へおとづれは墨もてかく 風生

水仙の花を貫く緑かな 青畝

水仙や波大島へこぞり飛ぶ 秋櫻子

水仙花附添妻の夢つよし 波郷

水仙を剪つて青年母に詫ぶ 鷹女

石塊に水仙挿して嗚呼わが墓 鷹女

水仙花三年病めども我等若し 波郷

水仙花眼にて安死を希はれ居り 静塔

水仙や心にふるゝ壺の罅 秋櫻子

水仙の芯自らを囲ひたる 草田男

三汀の墓は質素や水仙花 虚子

水仙や寧き日待てる病家族 波郷

水仙やおん母まつるいくとせぞ 秋櫻子

水仙や起承転結ととのはず 青畝

水仙や更に一句を成さんとし 汀女

母の居間父の墓前に水仙花 立子

水仙やよく眠りたりよく晴れたり 立子

水仙の島みち不意に海に落つ 青畝

水仙や風の名残の濤の声 秋櫻子

水仙や亡命客の七言詩 青畝

水仙持つて沖辺を見やる島童女 不死男

水仙花いくたび入院することよ 波郷

呼吸は吐くことが大事や水仙花 波郷

水仙花睡りの末の息くるし 波郷

水仙や乗雲の徒の散りじりに 耕衣

水仙花切字あるごと匂ひけり 青畝

膝の上は病床の机水仙花 爽雨

水仙のこち向く花の香をもらふ 汀女

水仙や灯影はせめて加ふべし 汀女