冬薔薇や心の富める人を敬す
石蕗庭に咲きをるときく夜に著きし
船徐々に面舵とりぬ小春凪
目覚めゐて雨をきゝをり宿の冬
休日に又も雨降り菊も枯れ
石蕗の雨やみて明るし烏啼き
初時雨景も心も変りけり
雑沓をさけて時雨の女坂
日向ぼこしてにこにこと待たれゐし
落葉掃く音近くなり遠くなり
父憶ふ心は同じ冬紅葉
母の居間父の墓前に水仙花
白雲の湧き賑はひぬ寒の空
水仙やよく眠りたりよく晴れたり
気を張れば病を忘れ冬紅葉
冬めけり虚子先生の知らぬ庭
何ごともなかりし如く冬日あり
冬晴や世にも小さな峠越す
初時雨人なつかしく待ちにけり
著ぶくれて肩凝つて来し道迷ひ
年の瀬や続く天気にはげまされ
わがまゝをせぬ子となりぬ冬休
あさみどり濃みどり綾に冬菜畑
寒燈を仰ぎ考へ伏して書く