笹鳴や鰯配給みかん配給
寄鍋に主客閑話や主婦多忙
寒菊にふれし箒をかるく引き
凍ろたるわが身とけゆく薬喰
日当れば火桶もいらず冬籠
風邪の子の客よろこびて襖あく
わけもなく冬の柳はなつかしき
朴の葉の落ちをり朴の木はいづこ
霜焼のかなしき右手をさすりつゝ
笹鳴や世にもきれいな夕日今
寒月の大いなるかな藁廂
寒燈や寝し人は皆壁に向き
竹馬の雪蹴散らして上手かな
天井に吊るしたのしみしみ豆腐
寒燈の届く灯影に病み伏して
信心の祈り伏したる足袋のうら
寺辞せば浮世の道や麦まける
知らぬ道いざなはれつゝ時雨れつゝ
銀屏に今日はも心定まりぬ
老父ゐて老姉老妹冬椿
寒灯にわがいそしめる手くらがり
寒風に吹きしぼらるゝ思ひかな