和歌と俳句

霜の屋根見え山ふかく大厦あり 麦南

ゆくほどに霜のきびしき山路かな 草城

霜強く野茨は刺を尖りけり 喜舟

また逢ふまでの霜をふみつつ 山頭火

あてもなくさまよう笠に霜ふるらしい 山頭火

暁の色ひろごる霜の大都かな 石鼎

板橋の霜を蹴あそぶ子供かな 石鼎

大霜やあせし野菊の花とまがひ 石鼎

枯枝の霜ふり落す箒かな 石鼎

霜強し物干竿の一文字 喜舟

霜あるうちは空も朝影とどめる 彷徨子

霜にはつきり靴形つけてゆく 山頭火

大根みんなぬかれてしまつた霜 山頭火

霜をふんでくる音のふとそれた 山頭火

ようできたちしやの葉や霜のふりざま 山頭火

さゝやかな煙出しあり霜の屋根 泊雲

霜見ればおのれいとしみ手を揉める 悌二郎

霜白し己れひそかに制すもの 汀女

霜白し独りの紅茶すぐ冷ゆる 汀女

屋根の霜樹の葉の霜を仰ぎ見る 草田男

霜踏んで行くや悪夢は昨夜の事 草田男

霜はげし舟路の浮葉かくいたみ 楸邨

霜の樹々一樹歪みて崖に向く 波郷

霜の樹々影のながれの崖に向く 波郷

霜の崖一刷毛の日がさしてゐる 波郷

霜の崖徹夜の仕事抱きて攀づ 波郷

しんかんと霜の日空のなごみけり 茅舎

らうらうと泰山木は霜に照り 茅舎

日に霜に泰山木の葉の厚み 茅舎

霜光り泰山木の葉に流れ 茅舎