秋山の上の遠山移るなり
岩うらへ鶺鴒の来て現れず
秋燕に映えつつ朝日まだ見えず
露けさや頭大きな馬柵の杭
遙かにも彼方にありて月の海
庵一つ月を真浴びて隙もなし
月の座の一人は墨をすりにけり
三日月のそむきて高き夕かな
二樹深く岐るるところ三日月
宵月のやがて大根の葉に照りぬ
月光の壁に汽車来る光かな
雲の端をまぶしや月の出でにけり
冬空は澄みて大地は潤へり
冬の水一枝の影も欺かず
機影去り直視為し得る冬日あり
冬空をいま青く塗る画家羨し
さざら波募れば冬日載りにけり
道の上冬の日向へ出るところ
冬日さす外出用意の二階かな
永く居て薄き冬日にあたたまる
柊の花から白くこぼれ落つ
柊の花多ければ喜びぬ
屋根の霜樹の葉の霜を仰ぎ見る
霜踏んで行くや悪夢は昨夜の事