和歌と俳句

短日 日短か

草城
短日や盗化粧のタイピスト

草城
短日や壁に居残勤務表

蛇笏
短日や賤が会釈の羞かしく

みどり女
役僧の廊下走れる日短か

万太郎
短日の身知らず柿といへるさへ

万太郎
短日の恩にきることばかりかな

万太郎
短日の読書室よりいでしかな

万太郎
短日や襦袢の裄のやゝ長く

万太郎
短日やことに雑木のさし交し

淡路女
日短くとつかは戻る我が家かな

虚子
物指で背なかかくことも日短か

虚子
来るとはや帰り支度や日短か

虚子
短日の駒形橋を今渡る

普羅
大阪に三日月あがり日短かし

万太郎
短日や鏡の中の山の膚

万太郎
短日の耳に瀬の音のこりけり

万太郎
短日の廊下に出れば灯りをり

万太郎
箸割つて辻占出すや日短き

淡路女
短日の陽のうらうらと蜜柑山

久女
洞門をうがつ念力短日も

草田男
短日の群れ買ふ顔のをみな等や

汀女
短日や汝がつけし煙草の火

汀女
短日のこの鳩の豆買へといふ

万太郎短日やうすく日あたる一ところ

鷹女
短日の燃ゆるひとみのギター弾き

鷹女
短日や我れもこころのギター弾き

虚子
牛立ちて二三歩あるく短き日

風生
人波にもまれ腹立ち日短か

白秋
口授しつつ うしろ寒けき 短日を 懸巣は飛びて するどかりしか

虚子
せはしなく暮れ行く老の短き日

虚子
老はものの何か忙がし短き日

汀女
短日の暗き活字を子も讀める

楸邨
短日やわれらおのおのの悔を持ち

白秋
女の童 篁子が削る 鉛筆に 朱き粉の飛び 短日いまは

楸邨
短日の疲れては見る指の先

汀女
短日や折から降るに傘連らね

汀女
短日のさて指示標や矢印や

汀女
飢じさを母に告げに来日短か

蛇笏
日短く棺さしのぞくうからかな

蛇笏
日短く葬者のもろき泪かな

万太郎
短日やどこにきこゆる水の音

楸邨
短日や脱ぎて地に置く鉄兜

楸邨
短日や灯にかざしみる切粉傷

楸邨
短日のものうつくしく灯ともりぬ

みどり女
一人ゐて短日の音なかりけり

青邨
短日の坂を下れば根津八重垣町