しぐれつつ留守守る神の銀杏かな
凩や水かれはてて石を吹く
寺町や土塀の中の冬木立
古墳や誰がさしすてし枯躑躅
草枯れて夕日にさはるものもなし
鮟鱇の口ばかりなり流しもと
手にとればぶちやうはふなる海鼠かな
冬籠髯でもすこしはやさうか
身一つをなぐさめかぬる炬燵かな
吾妹子とふりにけるかも桐火桶
風呂敷に乾鮭つつむ師走かな
火をくれぬ下宿わびしき師走かな
御僧に似てをかしさよ笠の雪
茶の花に黄檗山を立ち出でし
このごろは鴛鴦に恨もなかりけり
走るやうに枯野を通る灯かな
南縁に湯婆をあける日午なり
隣から寒夜とひ来る裏戸かな
君をおくつて凍ゆべく戸に彳みつ
窓の灯に慕ひよりつつ拂ふ下駄の雪