和歌と俳句

高浜虚子

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

ひらひらと深きが上の落葉かな

木枯や皆しぼみたるポプラの葉

木枯の辻馬車に乗る早足に

木枯や鞭につけたる赤き切れ

洟かむや時雨日和をめでながら

短日や馬車を駆りたる小買い物

水鳥の夜半の羽音やあまたたたび

水鳥の暫し流れて羽掻きかな

水鳥に菜屑すてたり岸の家

水鳥や岸辺の家の今日も暮れ

河柳地に伏しなびく枯野かな

蠣船の薄暗くなり船過ぐる

いつまでも炭ひいてゐる音すなり

北風や石を敷きたるロシア町

人住みて門松立てぬ城の門

行年やかたみに留守の妻と我