寒庭のみつまた花を白くもち
寒月の下背をてらし犬はゆく
月の夜は狐の檻の暗かりし
冬の園噴水石に落ちて白し
葛飾野蘆火は燃ゆる人ありてか
雑炊もみちのくぶりにあはれなり
寒菊は白き一輪狸汁
にひがたの亀田の客も狸汁
裏山に梅ありと思ひ日向ぼこ
返り花書屋をのぞく童あり
紅葉焚くことも心に本を読む
立冬や手紙を書けば手紙来る
傘細くすぼめくぐりぬ返り花
書きとむる落葉日記の二三行
ふりつもる落葉を蹴れば日にとどく
いまははやいろはもみぢも冬木かな
蛞蝓の行路はかはく冬の石
枯芝に手をつき梅を仰ぎけり
冬至の日きれい植木屋木の上に
短日の坂を下れば根津八重垣町