雪ふりてたのしと思ふ灯をともす
胡桃など割つてひとりゐクリスマス
外套にあふれ除夜祭の裳の裾が
中庭の雪掻く人に四方灯る
冬の雨あはれ帽子の羽は雉子
われが住む下より棺冬の雨
冬籠ハイネ冬物語などを読む
らふそくの燃えゆくはたのしクリスマス
タンネンの葉に臘涙聖夜も更け
雪に裾ひいてダンスの人等来る
窓の扉にバラを描けり冬ごもり
菊枯れて書斎のもののうづたかく
冬の川白髯橋を以て渡る
吾子はをみな柚子湯の柚子を胸に抱き
極月の月は大学の藪の上に
いくさ厳にまたうつくしく年は逝く
みちのくの乾鮭獣の如く吊り
みちのくの鮭は醜し吾もみちのく
みちのくの鮭とレンブラントの解剖の図と
みちのくの乾鮭みちのくの山恋ふか
校正の赤きペンもつ寒の入
雲凍てて瑪瑙の如し書斎裡に
青木の実赤を点じて大寒へ