逝く年のわが読む頁限りなし
白光の中に人馬や湖凍る
冬の日のあたる篁風に割れ
冬の雲春信ゑがく黄の帯か
隙間風来る卓上に林檎一つ
時雨るるや竹のごとくに枯るる草
モナリザはいつもの如し菊枯るる
古里は霜のみ白く夜明けたり
雪の野のふたりの人のつひにあふ
読みちらし書きちらしつつ冬籠り
時雨るるや雄島の橋の脚高く
松島の松に雪ふり牡蠣育つ
関守の裔また老ゆる日向ぼこ
狆を抱いて炭切る前を通りゆく
山眠る田の中の道犬走り
伯林の時の襟巻いまは派手
月光が皮手袋に来て触るる
伎芸天ほの初冬の光格子より
龕灯の灯影は冬や御目見に
障子の影いろいろ変り河鹿川