夕風のわたればさむし帰り花
帰り花とほき木末に幽かなる
帰り花日かげりぬればさやかなる
ゆきずりにみつけてうれし帰り花
雨はれてふたゝび寒し根深汁
散紅葉子がひろひしは美しき
宇治川の碧く曲れり寒の雨
もてあそぶ火のうつくしき時雨かな
冬の水晴れたり水皺にぎやかに
笹鳴の青きすがたの見えにけり
いきいきと灯のともりたる冬座敷
てのひらに熱き火桶や雪景色
冬紅葉照りながれへてさながらに
冬薔薇の咲いてしをれて人遠き
枕辺の灯のなつかしき霜夜かな
佳きひとの髪を結はざる避寒かな
青空に雲の居らざる焚火かな
うちさやぐ時雨の竹の青さかな
ひとり来て宇陀のしぐれに濡れにけり
にほどりや野山の枯るる閑けさに
かいつぶりさびしくなればくぐりけり
ラグビーや敵の汗に触れて組む
寒燈や陶は磁よりもあたたかく
カーテンの橙いろの避寒かな
凍雲のしづかに移る吉野かな