和歌と俳句

日野草城

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寒きびしごくりと白き乳を飲む

乳飲んで乳くさき口寒日和

四十二の顔を仰向け風邪の妻

描眉の今は消えつつ風邪深き

郵便の来てをりし門の寒日和

牡丹雪なれば韻きてつもるなり

咳をしてつきかげけむる霜夜かな

野山枯れ人はいよいよ美しき

夜番柝を打つ月光にひび走る

熱高く寒夜一時二時を聴く

風邪ひいて荒ひげたけぬ十二月

炬燵して大安楽や年の暮

寂として寒夜わが咳余韻なし

咳やみて寒夜ふたたび沈みけり

あたらしき褞袍を着るやクリスマス

極月の昼寝の夢のはかなしや

うすら日はありにけるかも寒牡丹

寒牡丹足音ことりことり去る

寒牡丹月明にしていたましき

年の瀬や寒牡丹いづくにかひらく

ひとりごとそのままこごる霜夜かな

餅を切る包丁のよく切るるなり

大年の昼湯にいのちありにけり

超歳す恵沢四方より到り