万太郎
いとけなきものゝいとしき時雨かな
万太郎
ナプキンにパンぬくもれるしぐれかな
風生
道ばたの石一つさへ時雨さび
立子
著衣尊像裸形尊像時雨寺
波郷
茶団子に日の当り来し時雨かな
立子
雑沓をさけて時雨の女坂
不死男
積石の米粒ほどや時雨寒
青畝
五劫思惟の弥陀はほろりとしぐれかな
青畝
鳴子の湯はなはだ匂ふしぐれかな
不死男
亀買うてみちのく時雨旅つづく
不死男
しぐるるやいよいよほそき弥陀の指
風生
中川女大原女よりもしぐれさび
立子
時雨るるやさして急ぎの用もなく
青畝
笹山のさむさがわかる時雨かな
不死男
しぐれ坂笛の豆腐屋下りゆけり
林火
廃塩田しぐれに海の色戻す
静塔
みえぬものひかるしぐれのうへのあめ
静塔
たけのふしながくひとつぶづつしぐれ
青畝
びるばくしや目細う時雨ごころかな
爽雨
息づきの仏とわれと堂しぐれ
爽雨
しぐるるやよべ祝うけし花は壺に
爽雨
塔かげの瓦片しぐれし地に拾ふ
爽雨
初七日の時雨荒れして僧おそし
爽雨
三七のしぐるる虹も一供養
爽雨
時雨去る島々雲を引きとどめ
爽雨
時雨傘催合ひて頬のふとちかく
爽雨
しぐれつつ妙義祭のよるは真闇
賽銭を投げて子供がしぐるゝよ 双魚
汀女
しぐるるやなど白波は誘ふなる
青畝
しぐるると子安の小貝濡れにけり
林火
満ちて帰る富貴の大堂のしぐれの香
林火
しぐれ恋ふ死を急ぐごと旅つづけ