和歌と俳句

香具山

舒明天皇御製歌
大和には 群山はあれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち  国見をすれば 国原は 煙立ち立つ 海原は 鴎立ち立つ うまし国ぞ 蜻蛉島 大和の国は

中大兄皇子三山の歌
香具山は 畝傍を惜しと 耳成と 相争ひき 神代より かくにあるらし 古も しかにあれこそ うつせみも 妻を 争ふらしき

中大兄皇子
香具山と耳成山と闘ひし時立ちて見に来し印南国原

持統天皇御製 小倉百人一首
春過ぎて夏来るらし白栲の衣干したり天の香具山

鴨足人
いつの間も神さびけるか香具山の桙杉の本に苔生すまでに

人麻呂歌集
ひさかたの天の香具山この夕霞たなびく春立つらしも

人麻呂歌集
香具山に雲いたなびきおほほしく相見し子らを後恋ひむかも

旅人
忘れ草我が紐に付く香具山の古りにし里を忘れむがため


好忠
かご山の瀧の氷も解けなくに吉野の嶽は雪消えにけり

匡房
香具山の ははかが下に うらとけて かたぬく鹿は つまこひなせそ

顕季
おもひいでよ 天の香具山 よそにのみ ききわたらむと いつか契りし

俊頼
十市には夕立すらしひさかたの天の香具山雲がくれ行く

親隆
しほたるる 天の香久山 何として ややとも叩く 夜半の水鶏

清輔
香具山の いほつまさかき すゑ葉まで ときはかきはに 祝ひおきてき

俊恵
ひさかたの あまのかごやま おしこめて つつむは春の なりけり

俊恵
ほととぎす 今ひとこゑは ひさかたの 天の香具山 をりはへてなけ

新古今集 後鳥羽院
ほのぼのと春こそ空に来にけらし天の香具山かすみたなびく

良経
風の音も神さびまさる久方の天の香久山いくよへぬらむ

新古今集 俊成
雪ふれば峯のまさかき埋もれて月にみかける天の香久山

慈円
みねは花 ふもとは霞 ひさかたの くもゐにみゆる 天の香具山

良経
ひさかたの雲井に春の立ちぬれば空にぞかすむ天の香久山

良経
雲はるる雪のひかりや白妙の衣ほすてふ天の香久山

俊成
白妙にゆふかけてけり榊葉にさきそふ天の香久山

定家
花ざかり かすみのころも ほころびて 嶺しろたへの あまのかぐやま

定家
五月雨はあまのかぐ山そらとぢて雲ぞかかれる峯のまさかき

良経
岩戸あけし神よも今の心ちしてほのかにかすむ天の香具山

続後撰集・冬 後嵯峨院御製
冬きては 衣ほすてふ ひまもなく しぐるる空の 天のかぐ山


也有
香久山に赤ひもの干すつゝじ


八一
かぐやまのかみのひもろぎいつしかにまつのはやしとあれにけむかも

八一
かぐやまのこまつかりふせむぎまくとをのうつひとのあせのかがやき

茂吉
あまつ日の きびしき道を あゆみ来て 真近になりぬ 天の香具山

茂吉
露じものしげくもあるかと言ひながらわがのぼりゆく天の香具山

秋櫻子
春草の墳は香具山を北に負ふ

たかし
香具山は畝傍を愛しと添い