和歌と俳句

藤原清輔

君をのみ ときはかきはに 祝ふかな ほかには千代も あらじとぞおもふ

たらちねの かみのたまひし 言霊は 千代までまもれ 歳もかぎらず

武隈の ふたきの松と 祝ふかな 影をならべて 千歳ゐよとて

幾代にか 松の緑の なりぬらむ われ見てだにも 歳は経ぬるを

代々ふれど かはらぬ竹の なかりせば 千歳のやどに なにをうゑまし

君が住む やどになれたる あしたづは 千歳のともと 思ふなるべし

新古今集・賀
年経たる 宇治の橋守 こととはむ 幾代になりぬ 水のみなかみ

新古今集・賀
ななそぢに みつの浜松 老いぬれど 千代の残りは なほぞはるけき

をとめ子が いまきのをかの 藤袴 こしゆふ露や 祝ひおくらむ

千代にまた 千代や重ねむ 松が枝に 巣立ちはじむる 鶴のけごろも

千代ふえき 双葉の松の みどりこは おもかげさへぞ ときはなりける

ゆくすゑを おもひやるこそ 遥けけれ けふぞ千歳の ももかなりける

わがかどに をしほの松の おひぬれば およあぬ身まで 千代をこそ待て

おもひやれ くらゐの山に 枝しげく さかえゆくべき 松のけしきを

香具山の いほつまさかき すゑ葉まで ときはかきはに 祝ひおきてき

君が代は 遥かに見ゆる わたつうみの 限れるはても あらじとぞ思ふ

おひのぼる ひらのの松は 吹く風の 音にきくだに 涼しかりけり

やまかげに おひしらけたる 椎柴の わかはえいづる 春もありけり

むらさきの はつしほ染めの にひ衣 程なく色の あかれとぞ思ふ

いつしかと 色ましそむる 言の葉に いとど身にしむ むらさきの袖