和歌と俳句

藤原清輔

おのづから ゆきあひのわせを かりそめに 見し人ゆゑや いねがてにする

新勅撰集・恋
おのづから ゆきあひのわせを かりそめに 見し人ゆゑや いねがてにせん

新勅撰集・恋
わがこひを いはでしらする よしもがな もらさばなべて よにもこそちれ

ななわたの 玉にも緒をば 貫くものを 思ふこころを いかでとほさむ

千載集・恋
難波女の すくもたく火の した焦がれ うへはつれなき 我が身なりけり

かくばかり おもふ心は ひまなきを いづこよりもる 涙なるらむ

千載集・恋
逢ふことは いなさ細江の みをつくし 深きしるしも なき身なりけり

新勅撰集・恋
としふれど しるしもみえぬ わがこひや ときはのやまの しぐれなるらむ

こひしなむ−いのちはつゆも−おもはねと−ためしにならむ−なこそをしけれ

露ふかき あさはののらに をがや刈る 賤のたもとも かくはしをれじ

千載集・恋
露深き 浅間の野らに をがや刈る 賎がたもとも かくは濡れじを

逢ふことの かたきいはとも なかりけるを いかなる恋の 身を砕くらむ

なかなかに おもひ絶えなむと 思ふこそ 恋ひしきよりも 苦しかりけれ

あぢきなや 思ふ方こそ あしひきの 山櫻とも 身をば捨てしか

心には 岩木ならねば 思ふらむ ただあやにくに かけぬなさけか

千載集・恋
朝夕に みるめをかづく 海人だにも 恨みは絶えぬ 物とこそ聞け

ますらをの はとふく秋や はてぬらむ しのびし人は 音だにもせず

たかやまに 離れしたかの かさながれ ゆくへも知らぬ 恋もするかな

やそしまや 千島の蝦夷が たつが弓 こころ強さは 君にまさらじ

つれやこの いせをのあまの 捨て衣 あなあさましの 袖のしをれや

おもひやる こころ離れぬ から衣 かさぬと人に 見えぬばかりぞ

恋ひしさの なぐさむ方や なからまし 辛きこころを おもひませずば