和歌と俳句

藤原清輔

いかにせむ にひ生えまさる こひくさの しげらぬ程に 逢ふよしもがな

しのぶ山 したゆく水の たへかねて むせぶ思ひを もらしつるかな

いかにねて さめし名残りの かなしさぞ またも見ざりし 夜半のゆめかな

新勅撰集・恋
いかにして さめしなごりの はかなさぞ またもみざりし 夜半のゆめかな

しほ満てば 入りぬる磯と ながめつつ 袖の干るまも なき我が身かな

おぼつかな 伊勢の濱荻 をりよくば ほのめかさむと いひし妹はも

すぎくれを ひくそま人は あまたあれど 君よりほかに よこめやはする

ちかひしを 思ひかへるの 人知れず くちからものを 思ふころかな

とりのこの かへるかへるは 契れども 遠つつとをも いふかわりなき

なき名にぞ うきも忘れて とはれける たえにし人に いひやたてまし

ひとりねの こころならひぞ 冬の夜は 長きものとも 思ひけるかな

みなかみの しるしならねど やまかはの あさきけしきは くみて知りにき

わがためは しづくに濁る やまのゐの いかなる人に すまむとすらむ

恋ひしさの たぐひも波に 袖ぬれて 拾ひわびぬる わすれ貝かな

恋ひしさに 袖ぬるばかり 思ひせば わすれ貝をも 拾はざらまし

あはれをも かけてやみにし 白波の 名残りをしのぶ われや何なる

あだによる 波のこころを わくからに あはれしらぬに なりにけるかな

うらうへに 風吹く磯の あまをぶね いづれの方に こころ寄すらむ

脱ぎおける 袂をみても ねをぞなく いづこのうらの あまになりけむ