刑部卿範兼
君が世に逢へるは誰も嬉しきを花は色にも出でにけるかな
参河内侍
身にかへて花も惜しまじ君が代に見るべき春の限りなければ
式子内親王
天の下めぐむ草木のめもはるにかぎりもしらぬ御世のすゑずゑ
摂政太政大臣良経
おしなべて木の芽もはるの浅緑松にぞ千世の色はこもれる
摂政太政大臣良経
敷島ややまとしまねも神代より君がためとやかためおきけむ
摂政太政大臣良経
濡れてほす玉ぐしの葉の露霜に天照るひかり幾世へぬらむ
皇太后宮大夫俊成
君が代は千代ともささじ天の戸やいづる月日の限りなければ
藤原定家朝臣
わが道を守らば君を守らなむよはひはゆづれ住吉の松
寂蓮法師
高砂の松もむかしになりぬべしなほゆく末は秋の夜の月
源家長
もしほ草かくともつきじ君が代の數によみ置く和歌の浦波
前大納言隆房
嬉しさやかたしく袖につつむらむ今日待ちえたる宇治の橋姫
藤原清輔朝臣
年経たる宇治の橋守こととはむ幾代になりぬ水のみなかみ
藤原清輔朝臣
ななそぢにみつの浜松老いぬれど千代の残りはなほぞはるけき
後徳大寺左大臣実定
やほかゆく浜の真砂を君が代のかずにとらなむ沖つ嶋もり
摂政太政大臣良経
春日山みやこの南しかぞおもふ北の藤なみ春にあへとは
よみ人しらず
常磐なる吉備の中山おしなべて千歳をまつのふかき色かな
祭主輔親
あかねさす朝日のさとの日影草とよのあかりのかざしなるべし
式部大輔資業
すべらぎを常磐かきはにもる山のやま人ならし山かづらせり
前中納言匡房
とやかへる鷹の尾山の玉椿霜をば経とも色はかはらじ
宮内卿永範
くもりなき鏡の山の月を見て明らけき世を空に知るかな
刑部卿範兼
大江山こえていく野の末とほみ道ある世にも逢ひにけるかな
皇太后宮大夫俊成
近江のや坂田の稲をかけつみて道ある御世のはじめにぞつく
権中納言兼光
神代より今日のためとや八束穂に長田の稲のしなひそめけむ
式部大輔光範
立ちよれば涼しかりけり水鳥の靑羽の山のまつのゆふかぜ
権中納言資實
常磐なる松井の水をむすぶ手の雫ごとにぞ千代は見えける