新しき年の初めはいや年に雪踏み平し常かくにもが
降る雪を腰になづみて参ゐて来し験もあるか年の初めに
鳴く鶏はいやしき鳴けど降る雪の千重に積めこそ我が立ちかねて
君が行きもし久にあらば梅柳誰れとともにか我がかづらかむ
あらたまの年の緒長く相見てしその心引き忘らえめやも
石瀬野の秋萩しのぎ馬並めて初鳥猟だにせずや別れむ
しなざかる越に五年住み住みて立ち別れまく惜しき宵かも
玉桙の道に出でたち行く我れは君が事跡を負ひてし行かむ
立ちて居て待てど待ちかね出でて来し君にここにに逢ひかざしつる萩
秋の花種にあれど色ごとに見し明らむる今日の貴さ
いにしへに君の三代経て仕へけり我が大主は七代申さね
十月しぐれの常か我が背子がやどの黄葉散りぬべく見ゆ
天皇の御代万代にかくしこそ見し明らめめ立つ年のはに
天地に足らはし照りて我が大君敷きませばかも楽しき小里
あしひきの山下ひかげかづらける上にやさらに梅をしのはむ
白雪の降り敷く山を越え行かむ君をぞもとな息の緒に思ふ
大宮の内にも外にもめづらしく降れる大雪な踏みそね惜し
御園生の竹の林にうぐひすはしば鳴きにしを雪は降りつつ
うぐひすの鳴きし垣内ににほへりし梅にこの雪うつろふらむか
川洲にも雪は降れれし宮の内に千鳥鳴くらし居む所なみ
青柳のほつ枝攀ぢ取りかづらくは君がやどにし千年寿くとぞ
春の野に霞たなびきうら悲しこの夕影にうぐひす鳴くも
我がやどのい笹群竹吹く風の音のかそけきこの夕かも
うらうらに照れる春日にひばり上がり心悲しもひとりし思へば
をみなへし秋萩しのぎさを鹿の露別け鳴かむ高円の野ぞ