和歌と俳句

能登

九月尽遥に能登の岬かな 暁台

迢空
緑濃き 能登の島かも。海ぎはまで、かたぶく畠に 穂麦赫れる

能登人の四五人まじる月見かな 普羅

大空に長き能登ありお花畑 青畝

神々の椿こぼるる能登の 普羅

立春や一抹の雪能登にあり 普羅

早桃噛んで能登の入江を渡りけり 普羅

能登人や言葉少なに水を打つ 普羅

梅雨晴や北斗の下の能登に入る 普羅

土用浪能登をかしげて通りけり 普羅

能登曇り十六宵草の露しとど 普羅

ハマナスや能登の目覚めに潮匂ふ 普羅

能登を越す西風つよし粽煮く 普羅

鯖寄るやあけくれ黄ばむ能登の麦 普羅

囮かけて能登宝達は安らけし 普羅

浪割るゝ水平線に能登の 普羅

能登人にびようびようとして吹雪過ぐ 普羅

能登の海鮟鱇あげて浪平ら 普羅

能登の畑打つ運命にや生れけん 虚子

能登言葉親しまれつつ花の旅 虚子

およそものわびしき能登の花冷よ 立子

船の畳をはいそぎぬ能登の果て 楸邨

舷側の西日の透きに能登青田 欣一

能登麦秋女が運ぶ水美し 綾子

足袋あぶる能登の七尾の駅火鉢 綾子

能登瓦ばかりなりけり朝焼けて 登四郎

巌楯に胡麻咲かせ能登珠洲郡 登四郎

胡麻咲かせ流人めくなり岬人 登四郎

岬人の刈り負ふ草に山羊蹤けり 登四郎

舟通しふかく入り来ての居り 秋櫻子

雪の田の千枚能登の海に落つ 青畝