礪波越すあはたゞしさよ幾時雨
鰤の尾に大雪つもる海女の宿
寒凪やタブの影おく海鼠の江
棹立てゝ船を停むる海鼠掻き
珠洲の海の高浪見るや海鼠かき
寒凪や銀河こぼるゝなまこの江
能登人にびようびようとして吹雪過ぐ
日短かし青貝のごと河北潟
寒卵かゝらじとする輪島塗
能登の海鮟鱇あげて浪平ら
えり巻を外せばしるき能登言葉
方寸の鰤のてり焼きうちかさね
倶利伽羅の西にまはりし冬日かな
鴨たてゝ再びねむる野山かな
ユヅリハもアスヒも触るゝ冬の山
汐干ひて干潟につゞく枯野かな
駒ケ嶽凍てて巌を落しけり
冬雲の下に蝗は居ずなりぬ
奥白根彼の世の雪をかゞやかす
蛇にあらず冬山の路生きてあり
父母は目出度きことに炉火にあり
一つゆく橇に浪うつ最上川