和歌と俳句

前田普羅

礪波越すあはたゞしさよ幾時雨

鰤の尾に大雪つもる海女の宿

浪割るゝ水平線に能登

寒凪やタブの影おく海鼠の江

棹立てゝ船を停むる海鼠掻き

珠洲の海の高浪見るや海鼠かき

寒凪や銀河こぼるゝなまこの江

能登人にびようびようとして吹雪過ぐ

日短かし青貝のごと河北潟

寒卵かゝらじとする輪島塗

能登の海鮟鱇あげて浪平ら

えり巻を外せばしるき能登言葉

方寸の鰤のてり焼きうちかさね

倶利伽羅の西にまはりし冬日かな

鴨たてゝ再びねむる野山かな

ユヅリハもアスヒも触るゝ冬の山

汐干ひて干潟につゞく枯野かな

駒ケ嶽凍てて巌を落しけり

冬雲の下に蝗は居ずなりぬ

強し蓮華と開く八ケ嶽

奥白根彼の世のをかゞやかす

蛇にあらず冬山の路生きてあり

父母は目出度きことに炉火にあり

一つゆく橇に浪うつ最上川