阿蘇遠し久住も遠し萱を積む
萱負はずあそびゐるなり阿蘇の馬
押せば押しもどす萱塚阿蘇広し
おのが食む萱運びゐて阿蘇の馬
ちりもみぢ水底森のごときかな
雪の田の千枚能登の海に落つ
雪吊の百万石の城曇る
雪吊に白山颯とかがやけり
湯の町の目貫短し雪を掻く
湯湧の湯ここよと夜半の雪達磨
晒桶古鏡さながら氷つたり
庇あはひに雪狂ふ日も寒晒
蝶の昼棺の木乃伊になりたしや
あの音が釘打つならむ受難節
竹の枷一文字なり波の雛
二十六聖人の如波の雛
痩身のデウスにうたひ卒業す
狗犬が踏むみちのくの菫草
大空の広きに春日やや曇り
色の浜さすらひびとの跣かな
夏山に大きな龕や佛たち
かがやける臀をぬぐへり海女の夏
梅天や帆綱数条緊張し
地の中の金渋垂らし滴れり
こんな蚊が明恵上人を螫しにけむ
虫干の母の日記や袋綴ぢ