和歌と俳句

阿波野青畝

甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

阿蘇遠し久住も遠し萱を積む

萱負はずあそびゐるなり阿蘇の馬

押せば押しもどす萱塚阿蘇広し

おのが食む萱運びゐて阿蘇の馬

ちりもみぢ水底森のごときかな

雪の田の千枚能登の海に落つ

雪吊の百万石の城曇る

雪吊に白山颯とかがやけり

湯の町の目貫短し雪を掻く

湯湧の湯ここよと夜半の雪達磨

晒桶古鏡さながら氷つたり

庇あはひに雪狂ふ日も寒晒

蝶の昼棺の木乃伊になりたしや

あの音が釘打つならむ受難節

竹の枷一文字なり波の

二十六聖人の如波の

石上古杉暗きかな

痩身のデウスにうたひ卒業

狗犬が踏むみちのくの菫草

大空の広きに春日やや曇り

色の浜さすらひびとの跣かな

夏山に大きな龕や佛たち

かがやける臀をぬぐへり海女の夏

梅天や帆綱数条緊張し

地の中の金渋垂らし滴れり

こんなが明恵上人を螫しにけむ

虫干の母の日記や袋綴ぢ