和歌と俳句

黒柳召波

夏木立阿闍梨の供のおくればせ

茄子ありこゝ武蔵野の這入口

世やうつりかはらの院の蚊遺かな

燈に書のおぼろや蚊屋の中

あさましく蠅打音や台所

曲リ江にものいひかはす鵜ぶね

吐す鵜と放ツ鵜繩のいとまなみ

少年の犬走らすや夏の月

檀林に談義果しよ夏の月

涼しさの日枝をのぼるや夏の月

河狩や身にそふ陰間かたらひぬ

ゆふだちや市の中ゆくさ ゝら波

町あつく振舞水の挨かな

兀山のうしろをのぼる雲の峰

うす雲に哥や望まむ白うちは

さまかへて御庭拝むや蝉の声

蝉鳴や昼寝しばらく旨かつし

かしこくも鞨鼓学びぬ鉾の児

祇園会に曳や手摩ヅ乳あしなづち

昼がほや子を運ぶ鼬垣根より

先す ゝめ東寺はちかき瓜所

冷し瓜加茂の流に枕せむ

なつかしき闇のにほひや麻畠

川上は温泉の涌くなる清水哉

児つれて法師のしのぶ御祓

白幣のはや西を吹みそぎ