和歌と俳句

與謝蕪村

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ぎをん会や僧の訪よる梶が許

端居して妻子を避る暑かな

なつかしき夏書の墨の匂ひかな

脱すてて我ゆかしさよ薄羽折

ゆふがほや黄に咲たるも有べかり

葛水や入江の御所にまうずれば

葛を得て清水に遠きうらみ哉

汗入れて妻わすれめや藤の茶屋

啼くや僧正坊のゆあみ時

かりそめに早百合生けたり谷の房

自剃して涼とる木のはし居哉

蓼の葉を此君と申せ雀鮓

いづちよりいづちともなき苔清水

二人してむすべば濁る清水

我宿にいかに引べきしみづ

百日紅ややちりがての小町寺

蠅いとふ身を古郷の昼寝かな

御仏に昼備へけりひと夜酒

川狩や楼上の人見しりがほ

月に対す君に唐網の水煙

裸身に神うつりませ夏神楽

ところてん逆しまに銀河三千尺

薫風やともしたてかねいつくしま

夢さめてあはやとひらく一夜ずし

任口に白きをまいらせむ

心太手自にせんとおぼしめす

雲の峰に肘する酒呑童子かな

佐保河を蔵にめぐらすにざけかな

見のこすや夏をまだらの京鹿子