和歌と俳句

與謝蕪村

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一渡し超べき日也衣更

小原女の五人揃うてあはせかな

たかどのの灯影にしずむ若葉

般若経読む庄司が宿の若葉

卯の花やけふは音なきわらは病

麦刈て瓜の花まつ小家哉

今朝見れば白きも咲けり杜若

やむかし屋かたの弓矢取

柚の花やゆかしき母屋の乾隅

柚の花や能酒蔵す塀の内

口なしの花さくかたや日にうとき

うきくさも沈むばかりよ五月雨

さみだれに見えずなりたる径かな

五月雨や滄海を衝濁水

床低き旅のやどりや五月雨

けふはとて娵も出でたつ田植

雨ほろほろ曾我中村の田植

ほたる飛ぶや家路にかへる蜆うり

手習の顔にくれ行くほたるかな

淀舟の棹の雫もほたるかな

おもだかは水のうらかく矢尻かな

藻の花や小舟よせたる門の前

かはほりのかくれ住みけり破れ傘

高紐にかくる兜や風薫る

ごとごつと僧都の咳やかんこ鳥

晝がほや煩ふ牛のまくらもと

若竹や暁の雨宵の雨

立枯の木に蝉なきて雲のみね

夏山や京盡し飛鷺ひとつ

涼しさや見世より裏を東山

突さして團わするる俵かな

すし桶を洗へば浅き游魚かな

寂寞と昼間をのなれ加減