星野立子
火取蟲来る頃ほひの外の闇
禁煙の今が大切火取蟲
どうどうと夏の朝雨有難や
帚草山と軒端に一軒家
炎天の下に蟲鳴き恐山
日曜の朝胡瓜もぎ茄子もぎ
滴りの貴船の奥の院憶ふ
葉桜の並木つづけり曲りても
ばら剪りてざぶりと桶に浸けておく
耳鳴りのわが声高き梅雨晴間
金色に光る朝日よ避暑の寺
老鶯や機嫌の唄をくり返し
静かさや睡蓮覚めし朝の雨
虹立ちし富士山麓に我等あり
梅雨の窓開けて市井の物音を
夫々の心に眺め梅雨の蝶
梅雨の蝶雨の小やみの明るさに
電話鳴る大きな音や梅雨籠
鉄線花乾きし風の吹きにけり
黙々と列につきゆく炎天下
冷房に疲れし肩を叩くなり
紐の如く糸の如くに涼風が
寝不足の一あくびして朝曇