和歌と俳句

星野立子

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晩涼の縁にしみじみ父憶ふ

子猿呼ぶ声にうとうと昼寝ざめ

ぞろぞろと早朝の客避暑の宿

句会して居るが何より麦茶冷え

しみ込んでゆく日緋牡丹白牡丹

帯とけば涼しくなりぬ水音も

植込に降り込められて梅雨の蝶

金魚屋の来し町角の昔めき

この涼を色にたとへてみれば紺

薄暑来ぬ人美しく装へば

集りし一日信者寺薄暑

戒律の中に涼しく僧ゆきき

峠路の木下闇恋ひ旅に出し

萩若葉雨沛然と来りけり

涼しげといはれ心外梅雨は憂し

鎌倉は今夕立と電話口

老母涼し坐りて眠りをらるるよ

百合の香をふくみし夜風寺に泊つ

音立てて大蟲小蟲誘蛾燈

高濱の家はからつぽ夜の秋

二時頃は山も汗する蝉ぢぢと

避暑たのし足りなきものは隣より