和歌と俳句

雀の子

雀子や人居らぬさまの盥伏せ 子規

子の口に餌をふくめたる雀哉 子規

濱草に踏めば踏まるる雀の子 石鼎

白秋
飛びあがり宙にためらふ雀の子羽たたきて見居りその揺るる枝を

赤彦
檐の端に巣をとられたる親雀巣を去りかねて二日鳴きしも

赤彦
親すずめ子をあきらめて去りしより禽といへども幾日経ぬらむ

日にとんで翼うれしき雀の子 石鼎

庭芝に雨降り出でぬ雀の子 風生

大口をあけて震へる雀の子 石鼎

口あけて我れに赤さや雀の子 石鼎

雀の子死んで悲しくなりました 石鼎

雀の子三尺ばかりとぶことよ 櫻坡子

雀の子白々として棟の上 石鼎

めし粒に馴るゝあはれや雀の子 喜舟

ひとり来て墓参さみしや雀の子 悌二郎

いつとなく雀の親も居ずなんぬ 青畝

大松に幾十百の雀の子 石鼎

連翹を枝うつりして雀の子 石鼎

晴れぎはの雨になき出ぬ雀の子 石鼎

子を負うて畑に雀の子を拾ふ 鴻村

仔雀と吾子とかなしき声張るや 鴻村

親雀舞ひおりくれば子雀も 花蓑

あきら日に子雀親とまぎれなく 石鼎

いつとなく子雀の親とまがひけり 石鼎

子雀の声切々と日は昏し 亞浪

子雀に学校の屋根まだ暮れず 占魚

親雀巣を出て遠く志す 誓子

子の雀硝子に羽搏つほど接す 誓子

岩に頭を軒端に尾羽を親雀 誓子

玻璃内の眼を感じつつ親雀 虚子

親雀身を細うして子雀に 虚子

子雀の三つかたまりて鳴けば鳴く 亞浪

子雀をいつくしむ鞄投げ出して 亞浪

親雀人を恐れて見せにけり 虚子

見廻して顧みもして親雀 虚子

このごろの庵木に殖えし雀の子 石鼎

巣を奪られたる親雀天翔くる 誓子

青天へ口あけ餌待ち雀の子 三鬼

ふるさとは穂麦に溺れ雀の子 風生

雀の子一日鳴いて吾も読書 青邨

子雀のつばさに遁れつつ距つ 悌二郎

つむりやや親子すずめの濃きあはき 爽雨

子雀のたたねば跼み向ひあふ 爽雨

平らかな地をすこし跳び雀の子 双魚