清羮に菜の花黄なる二月かな
松が根に熊手をおけば春の富士
松原に霓裳を引き春の富士
春二月茶畑の富士窈窕と
ふるさとは穂麦に溺れ雀の子
梨棚の地に画く影は春暑き
玉椿わが身痩せつつ咲きこぞる
垣の上に沖つ白浪さくら餅
うららかや三保を指す風見の矢
逗留も月を超えたる雛料理
春風に門を出でざる自愛かな
春寒や渚に晒るる大魚の歯
鶯や礁へ落とす萱の径
春燈や衣桁に明日の晴の帯
春昼やふとうつろなる草の庵
春宵の玉露は美酒の色に出づ
命うらら喜寿より見れば古稀若し
無為といふこと千金や春の宵
春暁の舐めたるごとき濡れ渚
蹼が柔かに踏むうまごやし
蹴あげたる鞠のごとくに春の月
わがものに仰いで春の星一つ