和歌と俳句

富安風生

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

下萌を踏む頽齢の歩々軽き

目鼻なき紙のの目鼻だち

草庵の春らんまんと諸葛菜

一すぢの東下りの春の道

一舟の手がかりもなき沖うらら

たんぽぽが咲いて千代田区霞が関

一とせの契愛しく椿咲く

村の噂土筆の袴とりながら

蕗の薹炙れば父と居るごとし

松籟や一月を経し梅二月

蕗の薹炙ればせちに父懐ふ

春惜しむ心と別に命愛し

雛菓子の金平糖の今むかし

塵塚に捨ててよごれず雛の桃

二月サツシユ四枚を咲きうづめ

下萌をふみて不思議に足軽き

春の雲愁ひをふくみひろごりぬ

何か居り何も居らざり春の闇

孫たちの花壇は愛し何か蒔き

盆梅のはらりほろりと情かな

約束の椿はいかに逢ひたしや

よべばこたへありて彼岸へ渡し舟

九十五齢とは後生極楽春の風