下萌を踏む頽齢の歩々軽き
目鼻なき紙の雛の目鼻だち
草庵の春らんまんと諸葛菜
一すぢの東下りの春の道
一舟の手がかりもなき沖うらら
たんぽぽが咲いて千代田区霞が関
一とせの契愛しく椿咲く
村の噂土筆の袴とりながら
蕗の薹炙れば父と居るごとし
松籟や一月を経し梅二月
蕗の薹炙ればせちに父懐ふ
春惜しむ心と別に命愛し
雛菓子の金平糖の今むかし
塵塚に捨ててよごれず雛の桃
梅二月サツシユ四枚を咲きうづめ
下萌をふみて不思議に足軽き
春の雲愁ひをふくみひろごりぬ
何か居り何も居らざり春の闇
孫たちの花壇は愛し何か蒔き
盆梅のはらりほろりと情かな
約束の椿はいかに逢ひたしや
よべばこたへありて彼岸へ渡し舟
九十五齢とは後生極楽春の風