和歌と俳句

春惜しむ

茂吉
ながらへてあれば涙のいづるまで最上の川の春ををしまむ

雲遠き塔に上りて春惜しむ 蛇笏

何一つうごくものなし春惜む 万太郎

焼跡の春を惜しまむ酒少し 波郷

雲の中に立ち濡れつつぞ春惜む 秋櫻子

試歩五十メートル往きて春惜む 草城

妻の肩低きに手措き春惜む 草城

老僧と一期一会や春惜しし 虚子

ドーム古りあかねさす暮雲春惜しむ 蛇笏

春惜む命惜むに異らず 虚子

春惜む人のまとゐに遅参かな 虚子

橋かかる遠景えたり春惜む 万太郎

惜春のあごをうづめて鬢に手を 立子

惜春の温泉溢るるに身をまかせ 立子

春惜しむ一歩一歩を山門に 立子

よちよちと窓までゆきて春惜む 草城

惜春の風強し庭掃けど掃けど 立子

春惜むおのが温泉の香をふところに 爽雨

杖われにおくれ先んじ春惜む 爽雨

山路ふと平らに春を惜み立つ 爽雨

春惜しし命減らして煙草のむ たかし

春惜み命惜みて共にあり 立子

春惜むおもてかくすや塗笠に 万太郎

志す惜春の句や墨をする 立子

惜春や思ひ出の糸もつれ解け 立子

春惜しむひとり砂丘の一斜面 林火

一山に一瀑蔵し惜春譜 立子

春惜しむ随行の笈眼に収め 林火

春惜しむ膝の能面昨日舞ひし 爽雨

春惜しむ手の能面を紐ながれ 爽雨

春惜しむ蕗にかがみて茎撓む 爽雨

春惜しむ心と別に命愛し 風生

春惜しむ白鳥の如き洩瓶持ち 不死男