和歌と俳句

星野立子

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飾りつゝふと命惜しきかな

潮見舟怒れる渦を制し去る

花見とは地に莚敷き酒に酔ひ

花人も阿波人形に似通へる

春の月いよいよ機嫌昇りけり

旅いゆく湧き立つ木の芽散る櫻

四月十九日正午の濃山吹

惜春の風強し庭掃けど掃けど

春草を踏みゆきつゝや未来あり

誰も皆コーヒーが好き花曇

ボストンは楡の大樹に春の雨

春光に探し当てたる墓二つ

道広きソートレーキの春の宵

よきモテルありと暮春の旅鞄

広野行く幾春時雨幾夕立

春眠のこらへがたなくガムもらふ

庫裡訪ふや大涅槃図にまづ礼し

いさゝかの祝ひ心に梅一枝

うらゝかや話やめては僧掃ける

山櫻虚空に虻をよく放つ

子の瞳遠くを眺め風車

遠足の一団すぎし水を撒く

たんぽゝと小声で言ひてみて一人

満開のをへだてゝ遠会釈

花器求め来て早春の違ひ棚