和歌と俳句

如月 きさらぎ

茂吉
きさらぎの日いづるときに紅色の靄こそうごけ最上川より

茂吉
きさらぎのひるの光に照らされて雪の消えをる川原を歩む

茂吉
山の中ゆいで来し小雀飛ばしめて雪の上に降るきさらぎの雨

茂吉
きさらぎの空のはたては朝けよりおほに曇りぬその中の山

きさらぎやしかへてあをき垣の竹 万太郎

鶲来て逃げし庭なりきそさらぎ 石鼎

鵯は神なり仄と衣更着 石鼎

哀れなる妻と思ひぬ衣更着 石鼎

きさらぎのあけくれ波の音ばかり 真砂女

如月や海老の生簀に海老をみず 真砂女

如月や値札ふかぶか豆の中 草田男

きさらぎや亀の子寺の畳替 万太郎

きさらぎや出土の壺のすわらざる 青畝

きさらぎのみどりあはあは昆虫館 双魚

きさらぎの家出て色にさとくなり 双魚