和歌と俳句

原 石鼎

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いつまでも雪消えのこり牡丹の根

紅梅の蕾の空を見てありぬ

紅梅の蕾ふくらみ椋鳥空に

紅梅や綻ぶ蕾二つ三つ

雛の家ほつほつ見えて海の町

大いなる大根供へ雛の壇

夕やけて暮るゝ障子や内裏雛

うたゝ寝の覚めて降りゐし春の雪

青空をしばしこぼれぬ春の雪

紅梅の青枝の蕾春の雪

春雪や鶴棲みて舞ふ和歌の浦

あは雪や空をあざむく鶴の白

淡雪の舞ひあそびつつ潮に落つ

淡雪の降りやみし荷の風車

淡雪に一点ぬれぬ凧の紅

あは雪の翳映る水心にも

あは雪やわが心鏡に映るもの

淡雪のこれでしまひや山の中

照りあうて揺翳す春の炭火かな

朝まだき大空めがけ揚雲雀

中空や囀り見えて落つ雲雀

雲雀飼ふ隣のありて都かな

春の雨尊きばかりなごみ降る

獅子を見て虎へまはりぬ春の雨

檻の虎しきりにあるく春の雨

春雨や鴨居の金具総飛鶴