干潟遠く雲の光れる暮春かな 亞浪
逆潮のひびき鳴門の春暮れつ 亞浪
人入つて門のこりたる暮春かな 不器男
北が吹き南が吹いて暮るる春 亞浪
うきにたへよむ書のにほふ暮春かな 蛇笏
訪れて暮春の縁にあるこゝろ 久女
黒繻子に緋鹿子合はす暮春かな 蛇笏
遊学の子に蔭膳やくれの春 淡路女
故里にことづてものや暮の春 汀女
志高からず春暮るるかな 草城
喫茶房白樺植ゑて暮春かな 蛇笏
暮の春奥嶺の裸形ただ藍し 蛇笏
風吹いて暮春の蝶のあわただし 虚子
旅終へてまた雲にすむ暮春かな 蛇笏
暮春かな生玉前の金魚みせ 槐太
子が妻が花挿し呉るる暮春の卓 槐太
杣の子が雉子笛ならす暮春かな 蛇笏
子のために暮春の汽車の旅少し 汀女
大事とる話ばかりや暮の春 万太郎