和歌と俳句

花見

欠伸すぐ唄になりけり花の茶屋 虚子

箸で食うふ花の弁当来て見よや 虚子

花人のおかる勘平をどりをり 万太郎

花人のぬぎちらしたる草履かな 万太郎

花人のしやつくりとまりかねしかな 万太郎

花疲れみかんをむいてゐたりけり 万太郎

花人や落花の水に呼びかはし 汀女

膝の子に飯やしなひや花の下 汀女

花人に北の海蟹ゆでひさぐ 汀女

花の幕うしろ向なる鳰の池 花蓑

吊革に並べる腕や花疲 たかし

花衣ぬぎてたたみてトランクに 立子

もろともに一時に咳や花見連れ 汀女

花疲れ流れについてゆくとなく 花蓑

花疲泣く子の電車また動く 汀女

寂光院にゆきてもみたく花疲 立子

花衣うつくしき人は美しく 青邨

けふもまた花見るあはれ重ねつつ 青邨

花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ 久女

じやんけんの白き拳や花衣 草城

花にゆく老の歩みの遅くとも 虚子

花人の包み負へるはなつかしき 風生

行き当り行き当り行く花の客 虚子

花人のこの廟所まで来るは稀 たかし

城壁にもたれて花見疲れかな 虚子