客ありて梅の軒端の茶の煙 虚子
御霊屋に枝垂梅あり君知るや 虚子
咲きすぎし梅たそがるる白さかな 万太郎
枯草に手をつき梅を仰ぎけり 青邨
白梅も白波もはや遠ざかる 青邨
梅咲きて野川沿ひゆく家路なる 貞
朝靄に梅は牛乳より濃かりけり 茅舎
瀬にくだり淵に高まり梅の路 爽雨
奥深く梅の渓あり梅林 花蓑
聳え立つ山が閊えて梅の軒 花蓑
鍬先の石に当りて梅の花 立子
梅白しまことに白く新しく 立子
花まばら小笹原なる風の梅 虚子
梅の月書斎を出でゝ逍遥す 花蓑
遠嶺富士雪げむりして梅の花 石鼎
傷兵の白ければ梅いや白く しづの女
散る梅にかざし白衣の腕なり しづの女
野梅咲き風男体を研く日なり 悌二郎
梅活くる水絨緞にこぼれけり 麦南
岨の梅日は蕩々と禽啼かず 蛇笏
しば垣はぬれ白梅花うすがすむ 蛇笏
谷の梅栗鼠は瀟洒に尾をあげて 蛇笏
谷梅にまとふ月光うすみどり 蛇笏
白梅を怒涛と見れば日暮れたり 青邨
咲く梅の遠からねども畦絶えぬ 秋櫻子
古道にさしいでし梅のけふ咲きぬ 秋櫻子
古鏡見る窓前梅のさかりなり 秋櫻子
梅一りん二りん無為の座照り昃り 草堂
まつ青に鐘は響きぬ梅の花 茅舎
妙法の太鼓も響き梅も咲き 茅舎
梅咲くや豆腐とんとん賽の目に 茅舎
書乏しけれども梅花書屋かな 虚子
北に富士南に我が家梅の花 虚子
星空へ消え入りがてに梅白し 花蓑
この頃の夜明の早し軒の梅 花蓑
旦夕べ綻ぶ梅にあかねかな 石鼎
咲き出でて梅としりけり屋根ごしに 石鼎
活けし梅一枝強く壁に触る 誓子
病める目にすぐ湧く涙梅白し たかし
粗末なる軒端の梅も咲きにけり 虚子
寄進して去りし旅人梅の寺 花蓑
梅咲いてうす靄こむる陵墓かな 蛇笏
たつみより朝日す庭の梅白し 石鼎
梅が香に潮ざゐ鳴りて夜もすがら 石鼎
燈ともして梅はうつむく花多き 多佳子
山浅く大滝かかる梅花村 たかし
滝川の流れ出てすぐ梅花村 たかし
老幹の横たはるあり夜の梅 素十
髪重し白梅あまた朝を耀り 信子
白梅に穹ゆくひゞきうすれつゝ 信子
梅一輪こぼせし風が眉にくる 信子
白梅に別る襤褸の一抱え 欣一
宿の梅あるじと共に老いにけり 虚子
梅一枝蝙蝠傘が犇けり 欣一
白梅や庖丁を磨ぐ寺男 欣一
築土なる古草からむ梅咲きぬ たかし
枝垂梅一枝を蔓のからみたる 虚子
目薄くなりて故郷の梅に住む 虚子
槙垣にさしたるごとく梅一枝 風生
谷梅にとまりて青き山鴉 蛇笏
はしる瀬に梅さきつづく埴生路 蛇笏
磯の香にむかひて行けば夜の梅 秋櫻子
梅咲いて炎の天をささげたり 楸邨
梅咲くと思ひゐて午過ぎにけり 楸邨
梅匂ふ梅のわかれといふべしや 楸邨
しづかなる梅の影さす焦土かな 楸邨