ゆく春の草の戸に置く芭蕉像
人が呉れし泥の翁や草芳しく
惜春の情芭蕉の像のした
芭蕉像笠はましろく夏近し
女人の山吹を挿す芭蕉像
雨降れば甍水たたえ春は逝く
二三人春を留むる宴かな
藤垂れてわが誕生日むらさきに
春宵の矢車の花赤藍白
みちのくの淋代の浜若布寄す
みちのくの波荒ければ若布もこはし
枯草に手をつき梅を仰ぎけり
紅梅の枝ながながと人の前
白梅も白波もはや遠ざかる
たんぽぽや県城門をここに開く
春雨や江南の乙女機を織る
たんぽぽや長江濁るとこしなへ
春蘭の脂粉の如く匂へりき
猫柳ほうけては落つ絨毯に
藤の花こぼして門は開くなり
墓守は読むこともなく藤の花
春の寺最後晩餐の図に見ゆ
春の山尼僧がクルス垂れて長し
風車春宵の闇に翼をひたし
ドンキホテ春の闇より出づべくや