風呂の火を焚きつつ眺め夕ざくら
筆硯のそのままにある夕ざくら
蒲公英を踏みしと思ふ夜の径
みちのくの山たたなはる花林檎
赤きものここに落つ山椿なり
凧揚げて来てしづかなる書斎かな
雪ふるやきのふたんぽぽ黄なりしに
縁に立つ馬酔木の花はゆれやすし
初蝶の朱金色に飛べりけり
落雁の都鳥あり梅の宿
鯉跳ねて弁才天の春灯
春の水弁才天の島ひたす
梅一本弁才天の島にあり
山門に雪のごとくに雪柳
花冷や尼の火鉢借りにけり
夕ざくら大内山へ烏とぶ
人も旅人われも旅人春惜しむ
花散るや紺紙金泥の鸚鵡経
曼陀羅に落花ひねもすふりやまず
たえまなき落花のしたのみやげうり
どうだんの花がこぼるる石遅日
ゆく春や一寺のうしろ又一寺
霞みつつ辛夷の花はなほも白く