和歌と俳句

辛夷 こぶし

歩み来て辛夷の下に話しけり みどり女

一辮のはらりと解けし辛夷かな 風生

一むきに蕾ならびて辛夷かな 立子

いつの間に風冷えて来し辛夷かな 立子

大空に莟を張りし辛夷かな たかし

降りしきる雪をとどめず辛夷かな 水巴

立ちならぶ辛夷の莟行く如し 虚子

町中の辛夷の見ゆる二階かな 花蓑

白雲のわかれ去りゆく辛夷かな 青邨

みな去りし辛夷の下に立つて見る 青邨

野の辛夷夕日かゝりて見え難し 花蓑

霞みつつ辛夷の花はなほも白く 青邨

野の池を十日見ざりき咲く辛夷 秋櫻子

風あたりいたみよごれし辛夷かな 素十

咲き満てる辛夷の風をいたみけり 麦南

神風の伊勢の辛夷の真白にぞ 草城

見上げゐて風渡りゆく花辛夷 立子

花辛夷人なつかしく咲きにけり たかし

饒舌が坂を下りゆき辛夷耀る 鷹女

もみくちやに辛夷は吹かれ心吹かれ 鷹女

花辛夷己がよそほひ重くるし 知世子