ちるさくら少年白鶏を友とせり
ちるさくら卵しろたへに生み落され
ちるさくら病院船はわだなかに
饒舌が坂を下りゆき辛夷耀る
もみくちやに辛夷は吹かれ心吹かれ
春は侘し場末にひとり見る映画
遺児の列長し春塵木々に舞ふ
春昼に耐へてましろき鰈を焼く
あはれ頭に野はかぎろへり皿洗ふ
東風の窓子に教ふべきこと尽きじ
春愁ふ真珠の吾こをかたはらに
夜々おぼろ皇ら御国は戦へど
春林檎食みちらばして夜更けたり
ひとひらの雲ゆき散れり八重桜
山笑ふ吾子の饒舌谺を呼び
陽炎に人を伴ひゆくはかなし
木蓮の莟日日にあり憂ふ
木蓮の莟兵馬を征かしめぬ
戦ひを思ふ雲雀野ゆくときも
かなしみに女は耐ふべし雲雀鳴く
花吹雪校門吾子を入らしめぬ
ひとり子の我が子か花に言誓ふ
花の雨校門濡れてありしかな
花冷えの鼻梁正しく立ち並べり
はなびらの散りつつ桜火となんぬ