梅花ころげ合ふ古里の皿囃子
青沼となる青い野の青すみれ
沖近くなる痩身のかざぐるま
囀や海の平らを死者歩く
耳に火の針散るだけの桜散り
皿を重ねて春山へ遁げ入れり
蕋に雨うつむき椿うつむいて
墓原や椿咲くより散りたがる
椿一重死は生き生きと蕋の中
頭に椿夜は出て踊る石佛
こめかみに土筆が萌えて児が摘めり
老牛に道ゆづられ陽炎へり
千輪の梅の囁きいのち飛ぶ
佛滅や老牛の尾に蝶生まれ
仰向いて雲の上ゆく落椿
麗や鶴にとさかのなきことも
橋上に陽が墜ち風のかざぐるま
鳥雲に濡れてはかわく反り梯子
椿落つむかしむかしの川ながれ
丘の半日かげろひやまぬ土饅頭
菜畑の黄に染まらんと浪がしら
うららかや森を漕ぎ出し軟体魚
花菜より花菜へ闇の闇ぐるま
連翹の夜毎黄が濃し何かある
藤垂れてこの世のものの老婆打つ
ひた歩む老婆びつしり白すみれ
をちこちに死者のこゑする蕗のたう