天曇る日は風船もかなしめり
かなしびの満ちて風船舞ひあがる
春水のそこひは見えず櫛沈め
鴉啼きわたり春日たはけたり
人を焼く鋭き火のいろに野を焼ける
霞立つたらちねの背の折れ曲り
掌に皺を刻む春水うづたかく
梅に新月舌にもたつく金太郎飴
忘却や神の杉菜を蹠に踏み
森にゐて薊は白毛飛ばすなり
春眠や金の柩に四肢氷らせ
初蝶に触れんと墓石伸び上る
蝌蚪を飼ふ加減乗除の技拙く
四月尽く凧の慟哭地におろし
梨花の香へ突つ込む農の跨ぎ足
卒業や造花のバラに蕋を植ゑ
春雪いくたび切腹で終る色彩映画
遡り来て一握の種子を蒔く
遠ちに僧形木蓮ぐぐと花開く
てのひらに蜂を歩ませ歓喜佛
金星菱形伏目の雛を祭れよと
満開の切なさ辛夷蒼味帯ぶ
涅槃ちかづく造花の蕋に花粉とび
陽の白書 朝出の蝶にあぶりだし