芝焼く火見つつ心定まらず
芝焼くや醜き虫の躍り出づ
芝焼いてもぐらの土の相隣る
庭さきの焼かれし芝を踏みて訪ふ
畦焼くやもぐらの土に燃えどまり
葛飾の大堤防を焼く日かな
老幹の横たはるあり夜の梅
門前やまづ老梅の一木あり
塗畦に下りて燕のはたはたす
山茶屋や雪解の風に旗高く
棚田より出来はじめたる雪間かな
麦踏のでてゐる島の畑かな
海苔舟や波に追はれて棹せる
春月や室生寺の僧ふところ手
吹きそめし東風の水辺に下り立ちぬ
弘法寺の坂下り来ればん鶏合
畦漏の走りわかれや花薺
籬より麦踏み出でぬ昼霞
雲雀籠かつぎてゆくは旅のもの
かつぎゆく雲雀の籠は空なりき
雛店に美しき花下がりけり
笏もちて面かくるる雛かな
種物屋隠元豆はうすぼこり