和歌と俳句

杏の花

もろこしは杏の花の名所かな 子規

子規
人住まぬいくさのあとの崩れ家杏の花は咲きて散りけり

花杏はたはた焼けばかすみけり 犀星

機屋の戸ふかく暗きに花杏 悌二郎

花杏新芽立ち添ふうすみどり 悌二郎

杏咲く夕戸おろせり梭止みぬ 悌二郎

犬が来て猫かけのぼる花杏 素十

花杏受胎告知の翅音びび 茅舎

従妹たちみなひととなり花杏 蕪城

花杏潮真青なる岬かな 楸邨

船酔のきのふに遠き花杏 楸邨

石屋根の崩れきつたる花杏 楸邨

島の子に手あげてみんや花杏 楸邨

船過ぎてふたたび暗し花杏 楸邨

一村や杏の花にうもれ住み 立子

妻と子の何興ずるや花あんず 

杏咲き雪代さそふ千曲川 秋櫻子

雨雲に紅暈置けり花杏 秋櫻子

嬰児湯を濁さずぽぽと花杏 双魚

枝寄せてあんずの花の深情 林火

杏咲く枝天に向け天に向け 林火

ぴかぴかと天が近しよ杏花村 林火