和歌と俳句

大野林火

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顔叩き顔緊らする竹の秋

雨の香の土間の土にも春が来る

紅梅の匂ひの風のほとけに行く

いただきまで杉の持山

春暁の佛間に隣るめざめかな

蝶伴れて知多の土雛売が来る

隆々の木瘤にさくら満てるなり

再開の花守病んでゐたりけり

襖絵も山奥山の花の宿

白山の神照覧の花の能

鼓の音神呼び百花咲かすなり

花匂ふべしこどもらも能を舞ふ

山笑ふ奉納の能進みをり

金銀の鯉と刻過ぐ春祭

みほとけの奈良に目覚めて立春

百歳の母持つひととさくら餅

宿は出て種蒔くを見て慰まんか

畦焼く火あちこち鬼の奥丹波

機音と春田を積みて与謝峠

機音に弾み出づるよ蕗の薹

鳴くことのなくて暮れたる春の鴨

働くは光るよ砂洲の畑打

あけぼのや花に会はむと肌着換へ