雛の夜や艀もその灯さし交し
物置けばすぐ影添ひて冴返る
雪解月夜闇また水の辺は光り
塀の内雪解月夜のむらさきに
瞼つめた辛夷初花いつ濡れしか
棕櫚の葉に雀二羽載る二羽うららか
囀りを臥して余生のごとく聞く
丈なせる残雪の層の中の道
おぼろ月奥の雪嶺の夜は見えず
雪山に春のはじめの滝こだま
結氷湖氷の解けし方に村
雲流るる日や蕗の薹ひざまづき
南に海蛤のすまし汁
西吹かば砕けん村ぞ海苔作る
囀りの斑雪の上にはじまれり
雀跳ねて春の土なり牛の前
いつ寝しや病閑春愁相似たり
まうへかたまる盆地の星よ桃咲けり
鳥帰る高曇りして山沈み
霞ひき盆地青ます山と川
山国に咲きて李よ雲まとふ
夕やけの坩堝の盆地春祭
剪定の桃を夕焼の癒すなり
どしや降りに落花ただよふ佛生会
膝の子の覚めたるまうへ櫻満つ