和歌と俳句

橋本多佳子

海風に尾羽を全開恋雀

毛を刈る間羊に言葉かけとほす

花しどみ老いにしあらず曇るなり

紅鱗をかさねて何の玉芽なる

花しどみ倚れば花より花こぼれ

残雪光岩に石斧を研ぎたりき

花しどみ火を獲し民の代の炉焦げ

雪解犀川千曲の静にたぎち入る

よろこびに合へり雪解の犀千曲

こゑ出さばたちまち寂し雪解砂洲

ひざついて雪解千曲をひきよせる

犀千曲雪解を合はす底ひまで

雪代の光れば天に日ありけり

紫雲英打つ木曾の青天細き下

りんりんと海坂張つて春の

海の鴉椿林の内部知る

かりかりと春の塩田塩凝らす

一丈のかげろう塩田に働きて

沼みどり瞳しぼつて恋の猫

昏るる刻の浪費をし尽して

やはらかき藤房の尖額に来る

荒鎌の刈り若布を逸す疾潮に

渦潮と落ちゆく舵輪いつぱいに

や山拓く火に昂りて

目つむれば鉦と鼓のみや壬生念仏