和歌と俳句

橋本多佳子

桜見てひとり酌む酒手向け酒

げんげ畑そこにも三鬼呼べば来る

眼にあまる万朶の生き残る

喪服着ての間いそぐ生き残り

桜寒む熱き白湯飲み生一途

踏み込んで大地が固しげんげ畑

げんげ畑坐ればげんげ密ならず

寒き戒壇人が恋しくなりて降る

みごもりて盗みて食ひて猫走る

仔猫見捨てし罪を負ひ帰る

雨風に巣藁のなびき法華尼寺

春の河夜半に大阪ネオン消す

ガラス透く春月創が痛み出す

一羽鳩春日を二羽となり帰る

死ぬ日はいつか在りいま牡丹雪降る

大和美しみぞれ耕馬を眼にせずば

月いでてわが袖の辺もなる

足袋白くの中をなほいでず

どんたくの仮面はづせし人の老い